通販・EC読了 約8分

ChatGPTが「どこで買うか」まで決める時代、地方の通販会社は商品ページで勝負する

通販のシステムに長く関わってきて、お客さんがお店にたどり着くまでの道筋は、何度も変わってきたと感じています。

最初の頃は、カタログ通販にFAX、そして何より電話での注文が中心でした。それまでは「アナログもやりつつ、ECもやる」という会社がほとんどでした。

流れが変わったのは2000年代に入ってからです。経済産業省の調査では、国内の消費者向けのネット通販は、2004年に約5.6兆円まで広がりました。2000年の約8,200億円から、わずか4年で7倍近くです。楽天市場の出店数も、2004年10月に1万店、2005年12月には1万5,000店を超えています。モールに出店して、ネット通販だけで商売をする会社が増えていったのは、ちょうどこの頃、今から20年ほど前でした。

その後、スマホが一気に広がります。スマホを持っている世帯は、2010年末の9.7%から、2015年末には72.0%に。2015年には、物のネット通販のうち約27%が、すでにスマホからの注文になっていました。

そして今、また入口が変わろうとしています。今回は、10月にアメリカで出てきた2つのニュースを読んで考えたことを書いてみます。

ChatGPTに「購入ボタン」が付いた

アメリカでは2026年10月10日から、ChatGPTが商品をすすめるとき、回答の中に「Shop at(〜で買う)」というボタンが出るようになりました。

これを追いかけたアメリカのWISLR社の調査が、なかなか考えさせられる内容でした。4つのブランドの商品について、購入ボタンがどこを指していたかを調べたものです。

AIの「購入ボタン」が自社サイトを指したのは約5%(WISLRの調査、アメリカ・2026年10月10〜13日・4ブランド)
AIの「購入ボタン」が自社サイトを指したのは約5%(WISLRの調査、アメリカ・2026年10月10〜13日・4ブランド)

ブランドの商品がAIに紹介されているのに、「買う場所」として自社サイトが案内されたのは、わずか5%ほど。半分以上は大手のお店に流れていました。

調べた期間は4日間だけで、数字はまだ暫定的です。それでも、方向ははっきりしていると思います。AIは、商品を紹介するだけでなく「どこで買うか」まで決め始めています。

ただ、救いになるデータもありました。ChatGPTが、そのブランド自身の商品ページを情報源として読んでいた場合、購入ボタンが自社サイトを指した割合は34%。読んでいなかった場合は6%でした。

自社の商品ページを読まれると、自社で買ってもらえる割合が上がる(WISLRの調査)
自社の商品ページを読まれると、自社で買ってもらえる割合が上がる(WISLRの調査)

自分たちの商品ページをAIにちゃんと読んでもらえれば、自社で買ってもらえる見込みは上がる。少なくとも、そういう傾向は見えています。

AIから来るお客さんは、トップページを見ていない

もう一つのニュースは、アメリカのアウトドア用品メーカー、Revelyst社の話です。

同社の担当者によると、ChatGPTなどのAIから来るお客さんは、トップページではなく商品ページに直接やってくるそうです。しかも、ほかの経路から来た人よりも、カートに入れる割合が高い。AIの中で比べ終わって、買うつもりで来ているからです。

記事によると、ネットショップへの来店のうちAI経由の割合は、2026年の初めの1〜3%ほどから、後半には4〜7%ほどに増えています。

2つのニュースを合わせると、こういう図になります。

AIから来るお客さんは、商品ページに直接来る
AIから来るお客さんは、商品ページに直接来る

お客さんは、AIの中で「何を買うか」をほぼ決めてきます。残っているのは「どこで買うか」だけ。そして、その判断の材料としてAIが読んでいるのは、各お店の商品ページです。

地方の通販会社にとって、これは悪い話なのか

最初は「結局、大手が全部持っていくのか」と思いました。広告費もブランドの力も、大手にはかないません。

でも、よく考えると、少し違う見方もできると思っています。

AIが商品ページを読んで判断するなら、勝負の場所は「商品ページに何が書いてあるか」です。ここは、会社の大きさとはあまり関係がありません。

たとえば、

  • どこで、誰が、どうやって作っているのか
  • どんな人に向いていて、どんな人には向いていないのか
  • お客さんから実際によく聞かれる質問と、その答え
  • 届いたあと、困ったときにどう対応してくれるのか

こういう情報は、作り手に近い地方の通販会社のほうが、本来たくさん持っているはずです。電話やFAXで毎日お客さんと話している会社なら、なおさらです。

問題は、その情報が商品ページに書かれていないことが多い、という点だと感じています。お店の人の頭の中や、電話口のやりとりの中にだけある。トップページの「こだわり」のページにまとめて書いてあって、一つひとつの商品ページには載っていない。あるいは、画像の中に文字として埋め込まれていて、AIには読めない。

僕がよく「もったいないな」と感じるのは、機能や仕様はたくさん書いてあるのに、「で、これで何ができるの?」「何が楽になるの?」が書かれていない商品ページです。

仕様はもちろん大事です。でも、お客さんが本当に知りたいのは、その商品を使うと自分の暮らしや仕事がどう変わるのか、ということのはずです。仕様だけを並べるのではなく、「これで何ができるのか」「どんないいことがあるのか」を、もう少し前に出したほうがいいと思っています。

AIに質問するお客さんも、「〇〇ができる商品を探している」「〇〇で困っている」という聞き方をすることが多いはずです。商品ページに「何ができるか」が書いてあれば、そうした質問とも結びつきやすくなるのではないでしょうか。

まずは、売れ筋の5ページから

全部の商品ページを一気に直すのは大変です。まずは売れ筋の商品を5つほど選んで、次の点を見直してみるのがいいと思います。

  1. 仕様だけでなく、「これで何ができるか」「何が楽になるか」が前に出ているか
  2. 価格・在庫・送料が、画像ではなく文字で書かれているか
  3. 電話やメールでよく聞かれる質問に、ページの中で答えているか
  4. 「このお店で買う理由」が、その商品ページにも書かれているか
  5. モールに出している商品情報と、自社サイトの情報が食い違っていないか

どれも特別な技術がなくてもできることです。そして、AIのためだけでなく、目の前のお客さんにとっても分かりやすいページになります。

ChatGPTの購入ボタンが日本でいつ、どんな形で出てくるのかは、まだ分かりません。でも、アメリカで起きていることは、数年遅れで日本にもやってくることが多いものです。準備できる時間があるうちに、手をつけておきたいところです。

最後に、僕がいちばん大事だと思っていることを書いておきます。

検索対策でもそうですが、キーワードをたくさん詰め込んで上位を狙うような、小手先のテクニックで仕組みの裏をかくやり方は、もうあまり意味がなくなっていくと思っています。昔は相手がプログラムだったので、ズルとまでは言わないまでも、テクニックが効く余地がありました。でも相手がAIになると、そうしたやり方はあまり効かないはずです。

それよりも、目の前のお客さんに話しかけるように、正直に、真摯に商品の説明を書くこと。接客するつもりで書くこと。結局それがいちばん強いし、特別な技術もいりません。

通販の会社は、もともと電話やFAXの向こうのお客さんと、ずっとそうやって向き合ってきたはずです。その接客を、そのまま商品ページに書けばいい。AIの時代だからこそ、そこに立ち返るのがいいと思っています。

AIに選ばれる商品データの整え方は、こちらの記事でも書きました。→ SEOの次は「AIに選ばれる商品データ」――ECの商品マスタが売上を左右する時代

参考にした記事・データ

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Author
遠藤 友治

フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 1996年から業務システムの保守・開発に従事。官公庁・保険・製造業を経て、2007年からコンサルティング会社の開発部門を統括。2026年にFFTを創業。一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。

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