同じような現場なら、SaaSで済む。FDEが入るのはその先だ
最近、FDE(Forward Deployed Engineer)について、こんな主張を見かけました。
一人で現場に入って作れるだけでは、案件が変わるたびにゼロからやり直しになる。前の現場で得たものを次の現場に持ち越し、チームで循環させることこそが大事だ、と。
筋は通っています。でも、正直に言うと、僕には腑に落ちませんでした。
この記事は、動画でもお話ししています
現場は、一つずつ全部違う
僕は、本当に数々の現場に入ってきました。チームで入ったこともありますし、一人で、二人で、数人で入ったこともあります。
その経験から言えるのは、現場は一つずつ、はっきり言って全く違う、ということです。
会社の業務は、それぞれ全部違います。同じ業種でも、同じような規模でも、やり方も、決まりごとも、例外も違う。一筋縄ではいきません。
だから、前の現場で得た業務知識が、次の現場でそのまま使えることは、あまりありません。
同じような現場なら、SaaSで済む
逆に言えば、こうです。
前の現場の知識が、次の現場でもそのまま使える。そんな同じような現場ばかりなら、SaaS(既製のクラウドサービス)で済みます。
SaaSは、6〜7割合っていればいい、という世界です。多くの会社に共通する業務を、一つの形にまとめて提供する。型にはまる業務なら、それで十分ですし、そのほうが安く、早く済みます。
前の現場の知識を持ち越して使い回せる領域は、もうSaaSの領域なのだと思います。
FDEが入るのは、SaaSでは済まない現場
僕が入ってきたのは、その先の現場です。
件数の規模が、全然違う。業務の流れが、その会社にしかない形をしている。
そして何より、一次情報が、そこにしかありません。その業務の情報は、ネットのどこを探しても出てきません。その現場に行って、人に聞いて、たどって、初めて分かります。
AIに聞いても、一般的な答えしか返ってきません。前の現場の知識を当てはめても、合いません。
だから、FDEが現場に入る意味があるのです。
持ち越せるのは、業務知識ではなく経験
では、現場を重ねても、何も積み上がらないのか。そうではありません。
やってきたことの経験は、ちゃんと自分のためになっています。
「なぜ、その業務をやっているのか」と聞くこと。情報がどこで生まれて、どこへ行き着くのかをたどること。何が出てきても、動じないこと。この構成は合わない、と言えること。
こうした経験は、どの現場でも効きます。ただ、それは仕組みにして使い回すものではなく、現場を重ねるうちに、人の中に積み上がっていくものです。
僕は、経験をどうやって次の現場に持ち越すか、ということを考えたことはありません。考えなくても、現場を重ねれば、それは自然と身についているからです。
速く作れるだけでは、代わりがいる
一つ、元の主張に賛成できるところもあります。
実装の速さは、AIで誰もが手に入れつつあります。「速く作れる人」というだけなら、いつでも代わりがいます。それは、その通りだと思います。
ただ、だからこそ、FDEの価値は、その現場にしかない一次情報を掘り当てることにあるのだと思います。前の現場の答えを持ってくることではなく、目の前の現場で、毎回ゼロから「なぜ」を聞けること。
毎回ゼロから始まる。それは、やり直しではありません。その現場の答えは、その現場にしかないからです。
FDEについての考え方を、一冊の本にまとめました。
関連するコラム:
業務システムやAI活用でお悩みなら。SaaSに業務を合わせるのではなく、 その会社の業務そのものを設計し直します。
無料相談を申し込むまず中身を知りたい方は現場開発プラン(FDE)現場アプリ内製化ブートキャンプ導入事例:システムパック株式会社・豊前市のパン屋「ぱんのこ」
フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 1996年から業務システムの保守・開発に従事。官公庁・保険・製造業を経て、2007年からコンサルティング会社の開発部門を統括。2026年にFFTを創業。一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。
著者の経歴・開発実績を見る