ちゃんと作るのは大変、作った後は寂しいほど楽。AIで内製したシステムの「その後」
エンジニア歴30年、いまはFDE(現場に入り込んで、業務のシステムを作るエンジニア)として仕事をしています。
最近、毎日10時間以上AIと一緒に開発していて、はっきり実感していることがあります。AIで内製のプロダクトを作るとき、ちゃんとしたものを作るまでは大変。でも、ちゃんと作った後は驚くほど楽、ということです。
そして、その「楽」の先に、ちょっとした寂しさと悩みがあります。今日はその話をします。
「作るのは簡単、その後が大変」という風潮
以前、僕自身も「作るのは簡単だけど、作った後が大変」という記事を書きました。そういう前提のサービスも出てきて、世の中もそんな風潮でした。
でも最近、僕の感覚は少し違ってきています。たしかにAIを使えば、動くものを作るのは簡単です。でも、簡単にできたものが本当にそれでいいのか。ちゃんとしたものを作るのは、やっぱり難しいんです。
「作った後が難しい」と感じるのは、作る段階の難しさが見えていないからかもしれません。本当は、ちゃんとしたものを作るほうが難しい。そして、ちゃんと作ってしまえば、その後は簡単です。今日一番言いたいのは、そこです。

0から1は、まだ人間の仕事です
AIは実装をやってくれます。プログラミングは速いです。AIの世界の話なので、当たり前ですね。
ただ、設計はまだまだです。Opus 5.5でも、AI任せの設計は「普通」の域を出ません。普通の人が設計した場合と僕が設計した場合では、かなり差が出ると実感しています。
エンジニアではない方が作ったプロダクトも、いくつも見てきました。よくできていると思いますし、ある程度のものは作れる時代です。それでも、かかる時間も、生み出す速さも、精度もまったく違います。
業務の知識なら、現場で実際に業務をしている方のほうが、僕よりずっと詳しいでしょう。ただ、それをプロダクトにする、システムにするときに、AIだけの視点ではまだ足りません。
AIを道具として使うことと、AIに作ってもらうことは、全然違うことなんです。ゆくゆくはエンジニアがいらなくなる日が来ると僕は思っていますが、今はまだその手前です。
設計とデプロイは、いい加減にしてはいけない土台です
設計だけでなく、デプロイ、つまり本番の環境に出して動かすところまでが「作る」です。ここはAIの力があっても大変です。
実は僕はデプロイもAIにやらせていて、手はほとんどかかっていません。それでも、設定やセキュリティの判断には知識と経験が必要です。何を確認すべきか、どこが危ないかを知っているから任せられる、というのが正直なところです。
設計して、セキュリティも考えて、デプロイする。ここがプロダクトの土台で、僕は今、ここが一番難しい場面だと思っています。
動くものを簡単に作ることもできます。でもここは、僕が一番いい加減にしてほしくないところです。土台をしっかり作っておけば、その上に積む改修や追加は、驚くほど楽になります。
リリース後の改修は、ほぼ完璧です
ところが、作ってデプロイした後は、話がガラッと変わります。
運用を始めて1か月もすると、要望が色々と届きます。「ここをこう変えたい」「こういう機能を足したい」といった改修や追加です。
僕はその要望の文面を、そのままAIに渡して実装させています。これがもう、ほぼ完璧です。
極端に言えば、メールで届いた要望をそのままAIに渡し、AIが実装してデプロイまで済ませ、「おっしゃった通り対応しました」とメールで返信する。ここまで自動でできてしまいます。
なぜ、作った後は簡単なのか。それは、プログラムそのものが仕様書だからです。
僕には20年間作り続けてきたプロダクトがあり、そのプログラムは11万行あります。僕もほとんど頭に入っています。それでもAIに色々やらせてみると、僕以上によく分かっていました。メンテナンスをやらせても、ちゃんと理解しています。
先日、こんなことがありました。お客様から「この部分に不具合がある」という問い合わせが来たんです。読んだ瞬間、僕はピンと来ました。11万行のうち、あそこらへんの10行くらいだな、とソースがパッと頭に浮かんだんです。
でも、待てよと思いました。僕が「ここらへん」と教えたら試しにならない。そこでAIには何も言わず、お客様の問い合わせ文だけを渡して、11万行の中から探し当てられるか試してみたんです。
結果は、わずか数秒。不具合を起こしている該当の1行を、11万行の中からぴたりと示してきました。僕の予想と完全に一致していました。

仕組みを考えれば当たり前です。人間の頭に11万行すべては入りません。AIは覚えておける量で人間を超えていて、探すのも一瞬です。すでにあるものを扱うなら、人間よりうまく、速くできて当然なんです。
0から1は難しい。でも1から100はAIが得意。追加の機能も、改修も、不具合の対応も、全部AIのほうが優れています。原理原則を考えれば当たり前のことで、それが分かるかどうかが、一般の人と僕らエンジニアの違いだと思います。
それでも、自動化はしていません
ただ、そうなると僕は悲しいわけです。はっきり言って、その間に僕が入らなくても問題なく回るのですから。しかもスピードも速い。これは悩みます。
なので、自動化はできるけれど、やっていません。必ず僕が見て確認し、承認してから進めています。理由は責任の所在です。いくらAIが完璧になっても、責任を持つのは人間です。

ただ正直に言うと、最近は「承認いらないよね」と思うことが増えました。それくらい、ちゃんとできているんです。
これは僕の作り方にもよると思います。こういうときはこういう確認をする。こういうテストをする。デプロイした後はこうやって確認する。その仕組みを全部作って、AIに指示してあります。だから自動で回ってしまうんです。
寂しさと、人間が考えるということ
本当に自動で回ってしまって、寂しいなという感じです。そして、このままだと人間が考えることが少なくなって、大丈夫かなとも思います。
そこで最近は、意識的に「僕にしかできないところはどこか」を考えるようにしています。AIに任せられるところは任せる。そのうえで、承認は無理やりでも僕がやる。
面倒だと思っても、任せても大丈夫だと分かっていても、僕が間に入る。一応でも、自分の頭で考えてから物事を進める。それが大事だと、最近思っています。
おわりに
これは、毎日AIで開発し、10時間以上AIを使っている人間の話です。最先端の話なので、皆さんがここまで到達することは、なかなかないかもしれません。
ただ、僕が今こうなっていることは、ゆくゆくは皆さんにも起きることだと思います。作った後が楽になったとき、自分は何を考え、どこに立つのか。そのときのために、頭の片隅に置いておいてもらえたらうれしいです。
現場からは以上です。
以前書いた「作ったあと」の話は、こちらです。→ AI時代、「作れる人」より「終わらせられる人」の価値が上がる
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無料相談を申し込むまず中身を知りたい方は現場開発プラン(FDE)現場アプリ内製化ブートキャンプ導入事例:システムパック株式会社・豊前市のパン屋「ぱんのこ」
フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 1996年から業務システムの保守・開発に従事。官公庁・保険・製造業を経て、2007年からコンサルティング会社の開発部門を統括。2026年にFFTを創業。一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。
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