通販・EC読了 約6分

広告を見るのが、人じゃなくなったら。開くWalmartと閉じるAmazonから考える、モール広告のこれから

広告を見るのが、人じゃなくなったらどうなるんだろう。

最近、このことをよく考えます。モールの広告は、人が検索結果を眺めることを前提に成り立っています。では、商品を探して比べる役目をAIが引き受けるようになったら、何が変わるのでしょうか。

11月4日、ロイターがちょうどこのテーマで分析記事を出しました。アメリカの話ですが、楽天やAmazonに広告費をかけている日本の通販会社にとっても、考えておく価値のある内容でした。

広告の前提が揺らぎはじめている

記事によると、アメリカの小売の広告市場は推計744億ドルで、WalmartとAmazonの2社で88%を占めています。Morgan Stanleyの研究者は、2030年にはアメリカのネット通販の支出の10〜20%を、AIが代わりに買う形が占めるかもしれないと見ています。

AIが商品を探すようになると、人が検索結果を眺める時間は減ります。上に表示してもらうためにお金を払う広告は、その影響を受けるかもしれません。

ただ、今すぐ大きな変化が起きているわけではありません。AmazonのジャシーCEOは、外部のAIによる広告への目立った影響はまだないと話しています。広告の運用を手がけるFlywheel社も、お客さんに広告の予算をすぐ大きく動かすことはすすめていないそうです。

僕自身も、少額でも広告を出し続ける意味はあると考えています。大事なのは慌てることではなく、前提が変わるかもしれないと知ったうえで、準備を始めることだと思います。

Walmartは「ルールを決めて入れる」

この変化に対して、アメリカの2大小売の姿勢ははっきり分かれました。

Walmartは10月21日、外部のAIを受け入れる仕組みを発表しました。お客さんは自分のAIを承認し、買うたびに確認するか、50ドル・100ドル・200ドルといった上限を決めて任せるかを選びます。Walmartはこれを、クレジットカードに家族カードを足すようなものだと説明しています。1か月ほどで始める予定とされていました。

AIとお店をつなぐ方法には、Anthropic社が公開しているMCPという共通の決まりを使います。AIにはカードの情報を渡さず、ルールを破ったAIは締め出す。誰でも自由に入れるのではなく、条件をつけて入れるという考え方です。

Amazonは「無断では入れない」

Amazonは9月、Meta社のAI「Muse」を締め出しました。AIであることを明かさずにアクセスし、お客さんのログイン情報を扱っているおそれがある、というのがAmazonの言い分です。Meta側は、Museはパスワードや支払いの手段を見られないと説明しています。

AmazonはPerplexity社とも裁判で争っています。3月に勝ち取った差し止めの命令は、8月に上の裁判所で取り消されましたが、Amazonは9月に訴えの中身を直して争いを続けています。

もっとも、AmazonもAIそのものを拒んでいるわけではありません。自社のAIアシスタントには力を入れています。争っているのは、誰が、どんな条件で店に入るのか、という点です。

開くWalmartと閉じるAmazon。どちらも「店の入口に立つのは誰か」を決めようとしている
開くWalmartと閉じるAmazon。どちらも「店の入口に立つのは誰か」を決めようとしている

どちらが正しいのかは、まだ分かりません。ただ、両社とも「店の入口に立つのが誰か」を真剣に考えている点は同じです。

地方の通販会社が今考えておきたいこと

これは大手だけの話ではないと思っています。

通販の現場には、人がいるから成り立っていることがたくさんあります。電話で「少し届くのが遅れます」と伝える。在庫の数が少しずれていても、担当の人が頭の中で調整する。

でもAIは、画面やデータに書いてあることをそのまま読みます。在庫・送料・届く日がずれていれば、ずれたまま判断します。

だから、規模にかかわらず、次の3つは今から考えておけます。

  1. 広告に頼っている割合を知っておく。 モールの広告が止まったら、売上がどれだけ減るのか。広告をやめる話ではなく、どれくらい頼っているかを知っておくための確認です。
  2. 商品データを見直す。 AIが比べるのは、説明文の雰囲気よりも、価格・送料・在庫・届く日といったデータです。これらが正しく、すぐ取り出せる状態になっているかを確かめます。
  3. AIにどこまで任せるかを考える。 Walmartの上限額のような「任せる範囲」の考え方は、自社の仕事にもそのまま使えます。人が確かめる場面と、AIに任せる場面を分けて考えておきます。

AIが買い物をする時代が、いつ本格的に来るのかは、まだ誰にも分かりません。ただ、そのときに問われるのは広告の金額だけではないはずです。

広告を見るのが人じゃなくなっても、商品を届けるのはお店です。正しい在庫を持ち、約束した日に届ける。地味ですが、AIの時代には、それがいちばんの宣伝になるのかもしれません。

ChatGPTに商品を見つけてもらうための点検は、こちらにまとめました。→ ChatGPTに商品を見つけてもらうために、自社の通販サイトで今できる点検

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Author
遠藤 友治

フォワード フィールド テクノロジーズ株式会社 代表取締役。 1996年から業務システムの保守・開発に従事。官公庁・保険・製造業を経て、2007年からコンサルティング会社の開発部門を統括。2026年にFFTを創業。一般社団法人日本生成AI推進協会 技術部長。

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